筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

子供に合わせることから ~岡山現職研修T先生の体験~

11月10日 子供に合わせることから ~岡山現職研修T先生の体験~

 岡山県の特別支援学校に在職するT先生が2か月間に渡り本校で研修している。この研修は、本校の教室に入り、子供の見方や授業の作り方を実践的に学ぶところに特徴がある。彼女は、授業づくりを学びたいと言って仲間に入ってきた。

 T先生の学校は、高等部単独の学校だ。本校の子供は幼稚部と小学部の子供であるから、当初は随分戸惑ったことだろう。研修も後半に入り、見学中心の参加から、授業づくりの一員としての参加に変わってきた。先生は希望して幼稚部教室に入っている。

 そのT先生から、りす組(4歳児クラス)のNさんと、とても貴重なかかわりができた、という話を聞いた。
当初、どのようにかかわったらよいか分からず、担任のM先生にいろいろ聞いたそうである。ブランコやトランポリンなど揺れる遊具を使った遊びが好きで、ほかに風に当たることを好むということを聞いた。そこで、Nさんの好きなブランコや風を用いた遊びをいろいろ試みた。

 トランポリンもNさんの好きな揺れが楽しめる。だが、Nさんはまだ一人では怖い。そのトランポリンにT先生がいるのを見つけ、Nさんが後ろから近付き、T先生にからんだ。T先生は、一緒にトランポリンを跳ぼうと思い、Nさんと向き合ったが、Nさんはくるりと後ろを向いた。背中から抱っこして跳んでほしいのだと理解して、それに応えることにした。そんなことを数回繰り返す中で、NさんはT先生に向き合い、手をつかんだ。だが、手をとるのはNさんの方でT先生から手をとろうとすると嫌がられた。それを数回行うとT先生から手をとることを許してくれるようになった。そして、一緒に向き合って、先生がいろいろな変化をつけて跳ぶのを楽しめるようになったのだそうである。概略、こんな話であった。

 教師が子供に合わせるかかわりから、子供が主となるかかわりへ、そしてしだいに教師が主となるかかわりへと移行してきた。教師が主となるかかわりの中で、子供は教師からのいろいろな提案を受け入れ、自分だけでは切り開けなかった世界に入っていく。授業で実現したいプロセスである。

 ところで、T先生が経験したプロセスは、担任のM先生が4月からのかかわりの中で経てきたプロセスと似ている。担任のM先生と時間をかけて作ってきたプロセスを、他の先生がほぼ同じプロセスを経て経験している。これは何を意味しているのだろうか。おそらく、Nさんの人との関わり方のスタイルといったものができつつあるのではなかろうか。Nさんは、このスタイルを用い、ときに相手に応じて変化させ、他者との(社会と言ってもいい)出会いを広げていくのだろう。