筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

初めて参加した運動会 ~運動会校内発表会~

10月30日 初めて参加した運動会 ~運動会校内発表会~

 今年の運動会は中止になった。当初予定していた日も、延期を予定していた日も雨に見舞われた。そこで、先週の27日に校内で発表会をした。私は、校外の会議があって参加できなかったが、週をまたいで今日、ビデオ録画を見た。

 ビデオに映っていたのは、晴れ渡る空の下、のびのびと運動に取り組む子供たちの姿だった。この様子を、保護者、兄弟・姉妹、祖父母や来賓の皆さんに御覧いただけなかったのは、本当に残念なことだった。

 ビデオを見て一番印象に残ったのは、5年生のH君が、この発表会に全面的に参加できたことだ。最後から2番目の徒競走のとき、笑顔いっぱいで走るH君からは、これまで運動会に参加できなかったことを想像できない。

 H君は、大きな集団の活動に参加することや新しい活動に取り組むことが苦手だった。入学式や卒業式等の行事、運動会や避難訓練、そして教室で行う新しい活動にも、「嫌だ」「やらない」と言って参加できないことが多かった。担任になった教師たちは悩んだ。様々な検査をし、いろいろなことを試みた。その結果、彼は「活動が嫌だから参加しないのではなく、どんな活動か分からないから参加しないのではないか」と考えた。

 それからは、無理に活動に誘うのではなく、活動の理解を促す学習に力を入れた。活動を説明するのは、まず言葉だ。翌日のスケジュールを、ていねいに説明し、話し合い、話し言葉で理解を図るだけでなく、絵や写真を用い、体験を通した理解も図った。

 日常、繰り返すことは理解しやすかったようだが、行事や大きな集団での学習が特に分かりにくかったようである。その中でも、突然やってくる避難訓練の理解は難しかった。緊急時であるからという理由で、訳が分からなくても「逃げろ」と言われる。もちろん説明はするのであるが、彼が納得するには至っていない。彼は、混乱し、騒ぎ出す。

 そこで、地震の避難訓練であれば、地震とはどういうものなのか、なぜ逃げなくてはいけないのか、逃げたらどうなるのか、絵や写真を用いて説明した。見聞きしたことが理解できたかどうか、クイズや質問で試した。地震を体験できる施設で疑似体験もした。そうした取り組みにより、彼自身が納得して、ようやく避難訓練に参加できるようになったのが、2年生の頃だったろうか。

 始業式や終業式などにも徐々に参加できるようになった。去年は運動会の総練習に参加したが、本番には参加できなかった。今年から始まった小学部全体の集会には、積極的に参加し役割も果たせるようになってきた。今年の運動会練習には、大変積極的に参加していたので期待をしていたが、総練習には参加できなかった。だが、担任の教師とは、本番に参加すると約束していた。

 そして、先日の「発表会」。発表会とはいっても、子供たちにとっては、運動会本番のようなものだ。そこに、彼は、全面的に参加した。分かって参加する彼は、走ることを、玉入れを、学年の種目である忍者大作戦を楽しんでいた。その姿を見て、ここまでの歩みを思い出し、胸が熱くなった。だがやはり、先日の発表会は「運動会」のようなものだ。たくさんの人が見守る中、彼がのびのび運動する姿を来年の運動会では見たいものだ。