筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

主体的・対話的で深い学びへの足がかり ~図工の授業から~

10月12日 主体的・対話的で深い学びへの足がかり ~図工の授業から~

 5年生の図工の授業を見た。教師に渡された様々な形の木片を自由に使って良いと言う。6人の子供たちは、思い思いに手を動かし始める。

 立方体の木片を積み上げる子供がいた。高く積み上げていく。だが、立方体の木片の数には限りがあるので、上にちょこんと円柱や三角柱の木片を置く。すると、できたところを見計らっていたように、隣から手を伸ばしてそれを倒す子供がいた。倒れたのを見て、倒した子供は「してやったり」とばかりに笑っている。倒された方は不満そうにはしているが怒る訳ではない。だが、積み上げては倒されるということが繰り返されると、木片を倒された子供はさすがに怒った。だが相手に向かう怒りではなかった。

 別な子供は、頭の中に浮かんだイメージを形にしているようだ。立方体と三角柱を組み合わせて「おうち」と言ったり、立方体を積み重ね上に三角柱を置き、立方体の横に三角柱を添えて「ロケット」と言ったりしながら、様々な組み合わせを試している。先生たちは、子供たちが作るのに応じて、「おうちに見えるね」とか「そのロケット飛んでいきそうだね」と話して盛り立てている。子供の手をとってやらせる様子はない。子供たちがそれぞれ、与えられた木片に触発されて自分から目的を定め動いているのだ。主体的に活動していると言っていいだろう。

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 5年生は、個性的で行動的な面々が揃っている。授業がつまらないとなると、座っていないだけではなく、大声を出して抗議することもある。その彼らがみんな集中して取り組んでいる。木片は良い素材なのだろうと思う。

 授業のまとめに入って、M先生が、「今日は、みんないろいろ作ったね。でも、くっつけていないからすぐにバラバラになったね。次の時間は、ボンドでくっつけましょう」と言った。聞いた私には、一抹の不安がよぎった。子供たちが、こんなに興味を示し熱心に取り組む授業がすぐに終わるのだろうか、作品として仕上げることで結局は大人の手が入るものになるのではなかろうか、そんなことを思った。

 新学習指導要領が発表され、「主体的・対話的で深い学び」という視点から授業をよくしていくことが求められている。今日の授業では、教材に触発され子供たちは表現を楽しんだ。主体性は見えたが、まだ深い学びには至っていないだろう。自分のこれまでの力を発揮した上で、自分だけで解決できないことを仲間や教員とのかかわりの中で解決し(すなわち対話的に)、そして今までその子供にはなかった知識や技能、行動の仕方などを獲得していく(すなわち深い学び)。今日、見せたくれた子供たちの主体性の先に、そんな学びがあるような気がする。そのために教員が、どんな仕掛けを用意するかが問われている。作品づくりだけに終わらない授業をM先生に期待する。